都城高専同窓会深山会 関東支部
  • ホーム
  • 関東支部について
    • 支部長挨拶
    • 役員一覧
    • 関東支部会則
    • 年会費・カンパの振込口座
    • 校歌
    • 関東深山会の旗
  • コラム
  • ギャラリー
    • 2019年総会・同窓会
    • 2018年総会・同窓会
  • お問い合わせ
  • メーリングリスト登録
  • 深山会本部

高専の行く道 ― 思い出を通して ―

9/29/2024

0 コメント

 
元都城高専教授 福岡女子大学名誉教授 疋田啓佑(国語・古典)

高専の卒業生なら、多分知っていることと思いますが、 最近私は、青色発光ダイオードを開発した、中村修二という人の書いた 『考える力、やり抜く力、私の方法』(三笠書房)と言う本を読みましたが、 そこで非常に考えさせられるとともに、高専にいた頃の中原祐典(電気工学科、元教授)さんのことを思い出した。 私が都城高専に在職していたのは、昭和四十一年から平成元年三月でしたので、 高専を去ってもう十五年もの年が経っているので、ここで話題にしているのは もう一昔前という感じでしょう。その頃の高専は、いや大学でもそうだったと思いますが、 研究費が足りなかった。それで、こんな研究費ではロクな研究もできないと不満をかこっていました。 私のような文科系の人間とて同じでありましたが、当時の私は、研究費をあてにして それで研究するのではできるはずもないという考えで、必要な書物は無理してでも 自腹を切って買って研究するのが当たり前のことでした。 しかし工学系の人は、実験設備や装置だから、自腹を切って買えるような金額のものではない。 そこで嘆き節を歌うので終っていたのですが、そういう中で、いかにして安く装置を作り、 改造し、自分のできる範囲で、こつこつと研究に励んでいたのが中原さんだった。 彼はガラス細工や溶接などまでやっていたのを思い出しています。

さて、青色発光ダイオードを開発した中村修二(現在はカリフォルニア大学)教授は、 徳島大学(院)から日亜化学工業という、地方の中小企業の会社に入社したので、少ない 研究開発費のため、すべて自分で装置を作り、改良して実験していった。 そのため機械に精通し、それを職人のような技術でもって、他の研究機関では考えられない ような改造をしながら、自分の信じる道をこつこつと努力し、その結果、多くの人達が 見放した窒素ガリウムで青色発光ダイオードを作り上げたのです。

この本は、氏の生い立ちから、日亜化学工業で苦心しながらも開発する過程と、 その間の氏の考え方を描いたもので、私はこれを呼んで、非常に感動したのです。 そしてこの本を読んだとき、先に述べた中原さんがそこにダブッテ思い出されるとともに、 中原さんが、乏しい研究費で行っていた高専の実験の在り方と共通するものを見るとともに、 彼のもとで学んだ学生達は、その研究態度に多くのものを学んだに違いないと想像しています。

科学はどの様に発展するか分からないから面白いのですが、 特に自然科学の発展には目を見張るものがあります。 それが人間にとって幸福をもたらすかどうかは分かりませんが、それでも当時のことから考えると、 隔世の感があります。その頃、機械工学科のMさんは、自分の担当は金属材料だから面白くない。 もう決まったものを教えるだけで、研究の発展性があまりないというようなことを言っていたが、 そのすぐ後にはアモルファス合金や、金属を離れたセラミックの方へと発展し、 またリニアモーターカーのような超伝導物質の研究が盛んとなっていった。

しかし、何故か我が国の教育は、理科離れで苦しんでいる。 それは不況とはいえ、物は豊かにあり、幼い時から、自然に親しむことをしないで、 与えられた玩具や教材で育った子供には、なんとか工夫をして作り上げるというような 喜びを味わうことなど、できない話なのです。 その上、教える先生の方にも、そのような体験を積んでいない世代の人が多く なってきたようではなおのことです。

現在、大学では、研究するだけでは機能を発揮しているとはいえないと言われ、 学生の教育についても力を入れることが求められているのです。 そしてそれを評価するため、学生による授業評価ということが義務づけられ、 実施されてもいるのです。

そこで思い出すのですが、以前から高専でも教育や学生指導(補導なども含む)に 力を入れることが求められていました。 しかし教官の方は、自分の専門の研究をより深めたい、またそれがより可能な大学に 移りたいという気持ちで、必死で研究に励んでいました。 私もその一人でしたが、学生の指導に手を抜いたり、お座なりなことをしたつもりはないし、 そのためか二十三年もの間、高専の教育に携わったのです。 それでも、研究に力を入れている人は、学生の教育や指導が疎かになっていると 陰口を叩かれ、また面と向かって言われることもあったのです。 しかし私たちは、毎晩遅くまで、というより明け方まで研究室で勉強をしていました。 時々一時頃か二時頃に、また帰り道に寮などに寄って学生のなかで遅くまで勉強をしている学生の様子を見に行ったりして、教え子を心配したものです。

先日、そのような遅くまで研究室で頑張った勉強仲間の一人芥川和雄(現在、静岡大学教授) さんから電話がありました。 そしてあの高専時代ほど勉強したことはなかったし、今の大学でも、あんなに熱心に情熱を燃やして研究に、教育に頑張っている人はいないように思うと言っていました。 彼は、私が東京の私大に移る数年前に、数学の講師として赴任して来たのですが、 よく遅くまで勉強するばかりでなく、数学の分からない学生を研究室に呼んで、 夜遅くまで教えていたのです。 研究する人こそよく教育もするという模範とすべき人でした。

高専の教育の良さは、少人数教育にあります。 従って、教える教官と学ぶ学生との間に親密な関係ができ、 人間的な面で多くの影響を与えることがあると思います。 そういう面で、江戸時代の松下村塾や適塾などに流れている教育的精神に繋がるものがあります。

昨今の大学のようにマンモス化して、教える側と学ぶ側との人間関係が希薄になっていくのを目の当たりにしながら、現在の高専での教育はどうなっているのだろうかと思い、 願わくは、たとえ教育内容が、科学的合理的なものであろうと、 教官と学生との間の人間関係の親密さを通じた教育が残っていて欲しいと願っているのです。

 【参考】  送別の辞(第5代校長 篠塚脩)
(みやま12号 2003年,平成15年8月より)
0 コメント



返信を残す

    広報担当@関東深山会

    関東深山会の広報委員です。関東支部の活動を中心に情報発信をしていきます。

    アーカイブ

    10月 2024
    9月 2024

    カテゴリ

    すべて

    RSSフィード

© 2024 都城高専同窓会 深山会 関東支部(関東深山会)
  • ホーム
  • 関東支部について
    • 支部長挨拶
    • 役員一覧
    • 関東支部会則
    • 年会費・カンパの振込口座
    • 校歌
    • 関東深山会の旗
  • コラム
  • ギャラリー
    • 2019年総会・同窓会
    • 2018年総会・同窓会
  • お問い合わせ
  • メーリングリスト登録
  • 深山会本部